愛嬌をつける荒療治として、ビール売り子のバイトをしたときの話。

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もう3年以上前のことだが、愛嬌をつけるための修行としてビール売り子のバイトをしたことがある。

やたらお堅い人・怒っている人と思われるのがコンプレックスだった私は、「そうだ、愛嬌をつける修行をしてみよう!」と思い、どうみても向いていないことは百も千も承知でビール売り子バイトに応募した。

ビール売り子は顔がいい子の方が稼げる。それは厳然たる事実だが「顔がいい子しか受からない」というのは迷信である。キツくて辞める人が多い業界なので、基本的には面接の段階でよっぽど「コイツは出せん……」と思われなければ採用される。(面接のときに聞いた)

(あ、でも球場にもよる。東京ドームとかは「華やかで稼げる!」とキラキラ女子大生から応募が殺到するため、採用側からの顔面足切りラインが上がると思われる)

ネタバレすると私は1シーズンでビール売り子を辞めた。しかも途中からは売店スタッフになったので、売り子として働いたのは2か月程度かもしれない。細かくは覚えていないけれど……。

ビール売り子という特殊なバイトに興味のある人は少なくないと思うので、私の短い勤務の中で見てきたこと、学んだことを書いていこうと思う。

目次

肉体的にも精神的にも、超キツイ。

【肉体がキツイ】15キロの樽を背負って階段昇降。

球場、会社、売り物(ビールかハイボールか等)によって差はあるが、売り子の持つ樽は15キロ前後ある。

15キロは重い、本当に重い。その15キロを背負って球場内の階段を昇り降りするので、体幹が貧弱だと簡単に転んでしまう。

しかも注ぐときは他の観戦者の邪魔にならぬよう屈むルールなので、注ぎは15キロの重り付きスクワットである。

ビールが売れないと樽は重いままだし、注ぎで座って休む機会もない※。1杯でも売れれば「ありがと~~!頑張る~~!」となるのだが、売れないので心も重い。

※基地に戻って休憩はできる。

やっている最中もキツイが、帰宅後の筋肉痛も凄まじかった。主に痛かったのは太もも、背中、腕、そして……表情筋とメンタル!!

そう……売り子は身体的なキツさばかり注目されるが、真のビール売り子のキツさは「キツかろうが売れなかろうが、絶対に笑顔でいなければならないところ」なのだ。

【精神がキツイ】売れなくても、笑顔で声かけし続ける

売り子には、どんなに辛くとも絶対にキープしなければならないものがある。

それは、満面の笑顔。

多くのお客はビール売り子がキツイことをわかっている。700円~という安くはないビールを売店ではなく、売り子から買おうという気にさせるのは労いの心なのだ。(売店に行くのがダルイというのもある)

ムスッとした売り子より、笑顔の売り子から買いたいと思うのは当然である。故に笑顔の有無によって、自分が回るときに挙げてもらえる手の本数は変動する。

そして販売時に「この娘からまた買いたい」と思われれば、「次も買うから〇時くらいに来てね!」等の約束を交わしてもらえる。

だから売り子はどんっっなに売れなくても、

自分が通った時は手を挙げなかったくせに、別の売り子が通ったら手を挙げた人を見ても、

キツくても、暑くても、転んでも、笑顔で声かけをし続けなければならない。

笑顔を絶やしたらお終いなのだ。

山猫

もともと表情筋が怠惰な上に「なんで楽しくもないのに笑わなきゃならねんだ」みたいな性格の私には荷が重すぎた……。

愛嬌をつける修行としてピッタリではあるが、荒療治すぎた。

売り子の厳しい世界 時給は?

気になる給料は?

球場・持つドリンクにもよるが、日給2200~3000円に、歩合で1杯25~30円が加算される。プロ野球の1試合の平均試合時間は3時間程度。出動の時間・休憩を考慮すると、実際に歩き回るのは2時間半程度だろうか。

ちなみに歩合給は売れば売るほど上がるので、稼げる人はどんどん給料が上がる。(例:40杯以上~は歩合給40円になる等)

私は弱小の売り子だったが、それでも時給換算すると1200~1300円程度はあったような気がする……。

重労働なので、稼げない新人には割に合わない仕事と言えよう。

ベテランとしのぎを削る。

ビール売り子は4~8年やっているベテランと、新人ぴよぴよ売り子に2極化している。あまりにもキツイので、生き残ったベテラン猛者か、夢見がちな新人しか現場に存在しなくなるのだ。

なので本当に稼ごうと思ったら、そのベテラン猛者としのぎを削る戦いになる。さぁ大変。

あくまで私個人が抱いた印象だけれど、ベテラン売り子は「可愛いけど性格キツそうやな」という人が多い。ロッカー室での居心地の悪さは、「クラスの1軍女子が4~5人でダベッている隣の席」といったところだろうか。

女だらけの職場特有のギスギス感、そこには新人にアドバイスをくれる先輩などほぼ存在しない。みんな個の力で這い上がってきたので当然と言えば当然だろう。

新人はたくさん出勤して顔を覚えてもらい、みんながあまり行かない階段上の座席まで昇って新規開拓に励み、少しずつ自分の常連客をつくる。ダルイからと階段を少ししかのぼらずボケーっと回っていると、あっという間にベテランに根こそぎ刈られてしまう。

厳しい世界である。あれを続けている人は本当にたくましい。

学んだこと。

売り子歴が2年以上=ある程度の結果を出せている猛者。

もし面接で「売り子を2年以上やってました」と聞いたら、その娘は採用した方がいいかもしれない。売り上げを聞く必要はさほどない。

散々述べた通り、売り子はキツイいので売り上げが高くなければ割に合わない!と辞めているはずだ。つまり稼げなければ2年もやっていない。

そして稼げている=根性・体力・愛嬌はお墨付ということだ。めげずに笑顔でたくさん出勤しなければあの業界では生き残れない。

どのお客さんがどの席にいるか?どのペースで飲んで次は何時ごろに回るか? これらを脳内やメモに整理して、その時々の様子を見て行動するのだから頭の良さも必要だろう。

粘り強くて、賢くて気が利いて、愛嬌がある。営業にぴったりでは?

アイドルってこんな気持ちなのかもしれないな…(涙)

なんかねぇ……やっぱりというか、残念ながらというか、なんというか、

キモイ客っているんですよね……。

誤解しないで欲しいが、決して見た目のことではない。私のいうキモイ客とは「買うから写真撮らせて」って言ってくるオッサンだ。

忘れもしない……全然ビールが売れない中、必死で笑顔を作って売っていたある日、一人のオッサンが「買うから写真撮らせてよ」と言ってきたのだ。

私はもともと大の写真嫌いである。カメラロールに自分の写真は一枚もないし、集団でも「撮るよ~」となったら一目散に逃げる。写真なんて証明写真で十分なのだ。

だから物凄く嫌だった……でも……ビールを買ってほしかった。

私は1枚だけ撮らせた。撮った写真も確認したし、本当にヤバイ人は勝手に撮るだろう、そう思ってやり過ごした。ところが、このオッサン。写真を撮らせた次の試合から、私から買わなくなったのだ。

このオッサンのPC(orスマホ)を破壊してやりたいと今でも思う。

たかが普通のポーズの写真でしょ?と思うかもしれないが、先に述べたように大の写真嫌いの私にとっては苦痛・屈辱の結晶なのである。

その後も買ってくれていれば許せたが、もう用ナシと言わんばかりだったので、憎しみが消えてくれない。許せん、あの豚野郎。

※ちなみに他にも、やたら売り子さんに声かけては「写真撮らせて」という男はいた。裏でボロカス言われてた。

私は「売れなくて泣く泣くヌード写真集を出すアイドルの気持ち」が5㎜くらいわかった気がした。

観戦客、優しい。

とまぁ、長々とキモイおっさんへの恨みつらみを語ったが、基本的にお客さんの9割は良い人だった。

ビール樽を持ったまま階段で転ぶと、けっこう派手に転倒する。すると周りの人が「でーじょぶか、でーじょぶか」「大変ねぇ、重いんでしょ?」とすごく労ってくれる。重い心が軽くなる瞬間だったので、わざと転ぼうかなとすら思ったこともあった。

そんな末期の売り子メンタルにとって、買ってくれるお客さんは”売れぬ地獄”から救ってくれる仏様なので、みんな4割増しくらいに見える。後光が射している。

もし貴方が野球観戦が趣味&金欠でなければ、笑顔で階段を昇っている売り子の心を救ってあげてください。おつまみ買うだけでも嬉しいので。

たった1シーズンの勤務なので、私の愛嬌レベルがどれほど上がったかは分からない。それでも経験として面白かったので、興味のある人は1回やってみるのはいいと思う。

話のネタになるし、メンタル・肉体・表情筋・コミュ力を同時に鍛えられるし、上手くいけば稼げるし、就活でめちゃくちゃ強いアピールポイントになる。

キッツいけどね!(笑)

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