宇多田ヒカル『BADモード』収録曲レビュー
BADモード
宇多田ヒカル本人曰く、BADモードとは「絶好調の逆」のこと。当初は息子くんとの親子関係を歌ったイメージで凝り固まっていたが、歌詞分析したりインタビューを聴いてるうちに
息子に対してより、「Time」のインタビューで話していた”珍しい脳の癌になった友人”に対する歌という方がしっくり来る。
明るく見えて、実はすごく複雑で少し重い気持ちの歌だな
と、印象がだいぶ変わった一曲。
何度も聞いて感じたのは「不安や孤独感は一緒に分け合って、楽しいことをして今を乗り越えよう。」というメッセージ。そしてそのメッセージは
歌の中では極めて限定的な存在である「いつも優しくていい子な君」に向けて歌っているけど、
みんな(ファン・知らない人)に対して抱くものでもある。
だからアルバムのタイトルにもなったのだろう。
詳しくはこの記事で↓
君に夢中
序盤は完全ノーマーク
火が付くと止められなくなる
普段から大人しくて、嘘が下手そうなやつあるある
……わかる!!
普段、大人しくて真面目なタイプほどハマった時に「何を言っても止められない状態」になるよね!!
白状すると、私が持つこの曲のイメージって
- ホストに貢ぐ女の子
- ズルズルと不倫を続けてしまう女性
で、そしてどちらもめちゃくちゃ真面目な子のイメージなんだ!
学生時代に遅刻なんて3回くらいしかしてない感じの……、大学でちゃんとフル単位とってそうな……
ちゃんと不織布のマスクつけてアルコール持参してそうな……!!!
で、もしそんな真面目な友達がホストに貢いでたり、不倫してて「報われないからやめなよ」って言ったとしよう。「バカ、やめとけ!」って本気で心配して言っても、その友達が
ここが地獄でも天国
バカになるほど、君に夢中
って本気の目で言ってたら、たぶん「……そうか」ってなる。そこまで言われたら、もう何も言えない。
「ここが地獄でも天国♪」とサラッと美しく歌っているけど、凄みのあるフレーズで上手いな~と思う。
でも、ぶっっっちゃけ私個人は好みでない……。
メロディも雰囲気もさほど刺さらず……。何より、バカになるほど、誰かに夢中になったことがないので、てんで共感できんのです。
ここまで人を好きになれる人が羨ましい。。。
- Flavor of life
- Prisoner of love
- 初恋
- Time
などなど、とにかく「切ないドラマ主題歌」を歌わせたらピカイチだなと改めて思った。
Aメロのもたれ気味のグルーヴ感に乗って歌うのがキモだけど難しい。英語歌詞部分が速いし、低音が結構きついとこ来るので、これも「カラオケで歌いたくても歌えない曲」になるんだろうな。罪作りな歌手め。
One Last Kiss
今まで私は宇多田の曲の中で「Best of 宇多田にしか歌えない曲」はBeautiful Worldだと思っていたが、One Last Kissはそれを超えたかもしれない。それくらい宇多田ヒカルじゃないと、この歌の魅力が3分の1も伝わらない。
Youtubeで歌ってみた動画を数多く漁ってみたけれど、いままでの宇多田ソングの中でこれほどコメント欄に「上手いけど、宇多田ヒカルが段違いすぎる」と書かれた動画は見たことがない。
恐るべし宇多田、、、と戦慄した一曲。今回のアルバムでいちばん好き。
美しい思い出の反芻。哀しくて幸せなループ。この歌はずっと「忘れられない♪」と言ってるけど、忘れられないのは、忘れたくないから。
たとえ、その反芻が幸福感だけでなく、喪失感も思い出させるツラいものだとしても忘れたくない。そんな歌。
ゲンドウの人生からユイの存在を消したら、彼は生きていないでしょ。Not Beautiful Worldすぎて。
PINK BLOOD
「自分の価値は自分で決めろ、子供じゃないんだから誰かに判断を依存するな」というメッセージが強い曲。
誰にも見せなくても綺麗なものは綺麗、もう知ってるから♪
これが、宇多田本人がいちばん気に入っているフレーズだそう。
「インスタ映えとかくだらん」を美しく言い換えたらこうなるのである。まぁぶっちゃけ本当に人生が充実してる人って、SNS全然アップしてなかったりするよね笑。
タイトルは友人の家で飲んだピンクシャンパン&ブラッドオレンジのカクテルが美味しかったから、仮タイトルでつけたけど、「だんだん意味もぴったりと思った」そうな。
いや、その”ぴったりな意味”を教えてくれよ!!
私、めっちゃ勘ぐってタイトルの意味考えちゃったんだけど?↓
Time
実はYouTubeで聞いてる時はそんなに好きではなかったんだけど、ライブバージョンを聞いて
宇多田、歌がうますぎじゃね????
と、改めてびっくりさせられた曲。
Timeは歴代の宇多田ソングの中で、まじでTOP3に入るくらいムズイ曲だと思う。
気分じゃないの (Not In The Mood)
目に映る光景をそのまま描写する歌詞なんだけど、どこか現実感がないのはサウンドが夢の中のような浮遊感のある感じだからだろうか。
シャボン玉ごしに世界を見ているような、波紋がかった水面に映った世界を見ているような、綺麗な歪みを感じる。
宇多田いわく「歌詞は実話?とよく聞かれてきたけど、今回はまじ実話」らしく、本当にロンドンには「真っピンクのテーブル・パステルブルーのパイプ椅子」があるカフェがあるらしい。
not in the mood♪を歌い、最後に「できた」と言っているダヌパ君(宇多田息子)と、母としての宇多田のやりとりが入ってて可愛いし、このやりとりだけが夢の中ではない、現実世界から聞こえる声という感じがする。
今回のアルバムでOne Last Kissの次に好き。
誰にも言わない
なんとなく「森林浴しているときの、無意識からの囁き」というイメージがある。
ふぉーん♪って音は空気の揺れとか流れみたいだし、トカトカトカ♪っていう木製楽器?の音は雫が落ちる音みたいだし、「空気が綺麗なところの水辺」というCMの映像まんまのイメージ。
ほぼウィスパーボイスの宇多田ハスキーボイスで歌うから、その静かな世界観を壊さない。
訴えかけてくるけど、あくまで”囁き”なのだ。
感じたくないことも感じなきゃ、なにも感じられなくなるから♪
テイク5では「絶望も希望もない、空のように透き通っていたい」と良いことも悪いことも”感じること”を全部放棄したがっていたけど、この曲は面倒なことにも向き合っている。
個人的にはテイク5のほうが好き(笑)
Find Love / キレイな人
まとめ中・・・
Face My Fears
まとめ中・・・
Somewhere Near Marseilles ーマルセイユ辺りー
12分くらいある、宇多田史上、いちばん長い曲。(カラオケでは6分くらいにされていた)
イントロの「ぽわんぽわん♪」という音が「人生最高の日」に少し似ている。
簡単かな?と思ってカラオケで歌ってみたら「あれ?ここは伸ばすの?」「ここは歌わないの?止めるの?」とあわあわする結果に。なめたらアカン。
Beautiful World (Da capo version)
One Last Kissではエンドロールの尺が足りない、ということで庵野監督が宇多田ヒカルに頼んで再録したversion。
「シン・エヴァンゲリオン:II」の末尾はリピート(繰り返し)の符号であり、Da Capoは楽譜の最後にかかれる音楽用語で「最初に戻る」という意味の音楽用語である。
最後の新劇場版エヴァ作品で、一番最初のテーマ曲だった「Beautiful World」へ戻る、という素晴らしい韻の踏み。
正直、私はオリジナルver.のBeautiful Worldが大好きなので「なぜこんな渋い?アレンジなんだ……」と最初は思ったが、庵野監督がインスタライブで言ったように「最初に戻ったようで実は終わっている」という感じが出て、エヴァの終わりには合っていたのかもなとも思う。
Beautiful World については下の記事でさんざん書いたのでそちらへ。
- Beautiful Worldというタイトル=「月が綺麗ですね」
- 1番はシンジ目線、2番はユイ・レイ目線。母性の歌
- 君のそばで眠らせて=隣の墓で眠らせて
- 歌詞の意味分析
また、インスタライブで話題となった「痛み止め」の話についても書いています。
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